特定非営利法人SATOMORI:開発に携わってきた故に気づいた自然環境の大切さ

神野公園トンボ池保全活動

有明海岸もりづくり「育樹・美化活動」

特定非営利法人SATOMORIは、平成25年から白石町新明の海岸堤防沿いに「有明海岸のもりづくり」と称して育樹・美化活動を行ってきました。植樹をした当時は膝丈くらいだった樹木(さがの樹)はすくすくと成長し、今では5~7mを超え文字どおり「もり」が形成され二酸化炭素の吸収源となっています。発足して育樹・美化活動を続ける代表理事の田中和生さんは、建設総合コンサルタント会社の会長を務めながら同団体の活動全般をリードしています。「有明海岸のもりづくりは5月から11月まで毎月第4土曜日に活動をしており、メンバーはNPO会員の他、関連企業の方や個人などさまざまな方に参加してもらっています。活動を続けてきたおかげで昨年は自主的に高校生の参加もあるようになり、認知度が少しずつ広がってきました」と田中さん。

平成25年3月の植樹直後はこんなに小さい「さがの樹」でした。
令和元年現在。ここまで成長しています。高い木は5m~7m以上になっています。

そもそも「もり」をつくるきっかけになったのは、田中さんの業務が関係しています。
「時代の流れとは言え、公共事業の受託業務において、ひと昔前の開発事業の流れに乗って無謀な開発の手伝いをしてきたという反省の念があります。環境保全への配慮は二の次で森林開発や圃場整備等その他の工事で壊れてしまった自然環境を、子供たちの未来のために私たちが取り戻していきたいと思い、活動を始めました」。と話します。
現在の有明海沿岸のもりは約1.6㎞。「森といえば山と思うでしょうが、平坦な土地に森があってもいいでしょう? 地球温暖化防止のために緑化活動を続けてアスファルトの面積と同じ分の森林等の緑地を追加して確保しなければ気温の調節もできない。私たちはもりづくりを広げていき、『有明海千里のもり』を目指しています」と田中さん。たくさんの人々の思いがある限り、千里のもりはいつか実を結び、有明海沿岸に長大なもりが完成するでしょう。

子供たちが自然の中で遊べる場所を取り戻したい

SATOMORIでは、森林の育樹・保全活動のほか、自然体験の機会をつくったり人材育成にも力を入れています。次世代を担う子供たちが木登りやキャンプ、動植物と触れ合い、自然体験活動ができるようなイベントを開催しています。伊万里にある「こまなきの里山」で、年間4回にわたって、環境教育として植物観察や昆虫採集、親子での防災学習、バードウォッチングや生き物探しなど、日常では体験できないようなことを里山周辺で体感していただくため、裏方としてかかわっています。

こまなきの里山での活動写真

また、生物多様性の向上に向けて正しい知識を養うためビオトープ塾(自然環境保全管理技術者養成)を開催し、人材育成にも取り組んでいます。ビオトープとは、生き物(BIO)と場所(TOP)からなる地域の野生の生き物たちが生息・生育する空間という意味のドイツ語です。ここ数年で生態系などの知識を持っている人が企業にも求められており、公共事業においても必要不可欠な要素になっているそうです。「生態系や植物のことを知らないと、街路樹に向かない樹を選定して枯らしてしまうこともあります。知識を持っていないと適切な提案ができないので、これからのまちづくりには「ビオトープ管理士」のような資格を持っている人が必要です」と田中さん。関連した職務に従事している人に限らず自然環境に興味のある人など一般の受講もできるので、チャレンジしてみては。SDGs17の目標の「11住み続けられるまちづくりを」「13気候変動に具体的な対策を」「14海の豊かさを守ろう」「15陸の豊かさも守ろう」を達成するために有用な資格です。

トンボ池での活動の様子

佐賀市にある唯一の遊園地「神野公園」のトンボ池の再生・維持活動にも取り組んでいます。水草の繁茂で水面が覆われ、本来希少な動植物が生息するはずがその生息環境が悪化しているため、市民と一緒に水草の除去活動を年3回行い環境の改善に努めています。
一連の活動は持続可能な社会の実現のため。豊かな自然環境を守り増やす町づくりが求められている中、田中さんは「自分たちが子どもの頃川や野原で遊んでいたように、今の子ども達、未来の子ども達のために、川で魚をとったり自然の中で遊べるような場所を取り戻してあげたい」と活動に意欲を燃やしています。

「有明海岸もりづくり」や「ビオトープ塾」などの問い合わせ・申し込みは
特定非営利法人 SATOMORIまで

電話:090-8764-2172(田中さん)

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文/庄島 瑞恵